一日本と欧米との人の育成に関する大きな差異ー
2015年5月23日 00:10
『一にち一みり』 NO.058
ー日本と欧米との人の育成に関する大きな差異ー
ゴールデンウイーク中にNHKのBSで、こんな番組を見ました。
ある専門分野のプロ中のプロが、日本の子供達を指導する番組です。
この回は、新宿の少年サッカーチームに大物の指導者が登場するシーンから始まります。
現れたのは、全日本フットサルチームの監督をしている、スペイン人の大男。
子供達は、外国人だと思っていなかったらしく、監督の矢継ぎ早の質問に、もじもじして答えることさえできません。
監督は一切構わず、どんどん子供たちの目線に立ってアプローチします。
もちろん、そのチームには日本人の代表やコーチがいます。
先ずは、監督は日本人コーチによる何時もの練習をじっと観察します。
先ず監督が指示したのは、頭を使うこと、素早く考え行動することです。
すぐに理解できる簡単なルールを子供たちに話し、自らが輪の中に入って、ボール遊びをさせます。
15分くらいで少しなれると、すぐに違うルールの遊びが始まります。これも新たな遊びを理解させる訓練になります。中には、足で蹴らずに手でパスをすることもさせます。
とにかく、360度に目配り気配りをさせて、即座に考えて行動する訓練。あっという間に子供達は夢中になって取り組みます、さらには1日目にしてこの監督が大好きになってしまいます。
この監督の、一瞬での子供の気持ちのわしづかみに驚きました。
国をまたいでも、人間的魅力の大きさを、子供達はすぐに理解できるようです。
次の日は、チャンスをつかむためには、積極的にリスクを取ることを教え始めます。
今までの、そのクラブの教え方は、実は真逆のことを指示していました。
ボールを奪われないように、ゴールから遠くでパスを回し続け、ゴール前のディフェンスが崩れたら、初めてボールを中に入れる。
この監督は、ゴール前のディフェンスを崩すために、どんどんボールを中に入れる、リスクを避けては点は取れない、チャンスはつかめないと教えます。
次には、様々な実践のケースワークをします。全ての子供にやらせて、次の判断、アクションをどうすべきか、時間が掛かっても子供に答えを求めます、絶対に答えを教えません。子供が正しく考え判断できるまで何度も繰り返します。1人のディフェンダーの、おとなしそうな男の子。今まで一度もシュートを打ったことがありません。そのチームでは、フォワードに点取り屋が何人もいます。恐らく、彼の中では、ボールが来たらフォワードの気の利いた選手にパスをすることが、彼の役割だと思っています。
監督は、このおとなしいディフェンダーに、ゴール前の絶好の位置にボールをパスします。彼は、後ろに何人もの敵に囲まれ、前のゴールにはキーパーだけという状況でも、シュートをせずにパスを出す見方を探します。何度も、繰り返し彼に考えさせます。彼は、自分がシュートすべき事に気が付きます。
最終日の練習試合で、彼は人生で初めてシュートを放ちゴールを決めます。
次には、両親とコーチを交えて懇親会をします。既に、子供達が日々夢中になって取り組む姿を目の当たりにして、コーチも両親達も、監督に全幅の信頼を感じています。
そこで監督が話した事は、練習中や試合中に、叱責や罵倒をしないで欲しい、日常の生活においても、
あれもだめ、これもだめと、小言を言わないで欲しいというお願いでした。とかく、シュートを外せば、何でパスしないんだ、パスを回すと、シュートを打つ場面だ、全て結果を見てから叱責を繰り返す。
子供は、いつの間にか試合に集中するのではなく、コーチや親に叱れないように動くもの、何をやって良いかの判断ができなくなってしまう。大事な事は、自分で考え、判断し行動した事は、結果はどうあれ先ずはほめよ、という事です。後日談で、ある少年はお母さんの小言が激減したと喜んでいました。
最終日に、いつもは勝ったり負けたりのチームとの練習試合、何と9-0で勝利します。
この番組を通じて、日本人のメンタリティーというのは実は子供の頃から、このように良かれ悪かれ、培われているのかなと、すごく考えさせられました。
この番組のニュアンスをお伝えするために長文になってしまいました。
お読みいただきありがとうございます。